ある島の男とわたし

小さな会社の社長である夫とわたしのこと

すぐ逃げる男

島の男は、少しでも妻とケンカをしたり

意見のぶつかり合いをすると、家に

帰らなかった。または、妻の作った

夕食を食べないことが、男のささやかな

できる限りの反抗だった。



男は知らなかった。



それを繰り返せば繰り返すほど、

男は家族にとって、必要な存在では

なくなってゆくことを。



本当は、いつだって家に帰り、話し合う

ことが必要だった。

人に遣われたくない男

島の男は、人に遣われるのだけは

どーしても嫌だった。


だがしかし、今の自分にやりたいことや

今の事業にビジョンがあるわけでも

なかった。


体質の古い会社と共にするのも嫌だったし

社会を先取りしている会社と共にするのも

嫌だった。


自分が社会を先取りしたかった。

居場所を失った男

れいの島の男は


かれこれ10年もの間、あまり家にいない

夫であり父親である為に


とうとう家に居場所がなくなり


寝る場所も失った



けれど男は、今日も居場所のない家に帰る