妻がうるさいのは、不安だから。
島の男が漕いでいる船は、
燃料がとぼしかった。
舵をきる島の男の影で、燃料の
残を見ているのは、いつもいつも
妻だった。
ある時は満タンになり、そうかと思うと
またたく間に、カラカラになった。
男は妻に言われるまで、ガス欠で船が
沈没しそうだと、気づかない時も
あった。
妻は思った。大きな不安と共に。
わたしが、しっかりしなければ‼︎
だけどいつも、舵を切るのは、男だった。
島の男は、妻の言うことには、愛想よく
返事をしといて、実行することはなかった。
なぜなら、俺の船だったから。
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