ある島の男とわたし

小さな会社の社長である夫とわたしのこと

悲しいすれ違いと、深まる溝

島の妻も、こう思って頑張った時もあった。

「夫が、堂々とみなに誇れるように、成功させてあげたい」


島の夫も、何度となく、こう思って頑張った時もあった。

「妻、子供を、幸せにしたい。裕福にしてあげたい」



それは、2人は、ほとんど口に出したことは

なかった。


そんな思いも日々の日常の裏切りや、相手を傷つける言葉の積み重ねで、すぐにどっか行ってしまった。


何年も何年も、それの繰り返しだった。

妻がうるさいのは、不安だから。

島の男が漕いでいる船は、

燃料がとぼしかった。



舵をきる島の男の影で、燃料の

残を見ているのは、いつもいつも

妻だった。



ある時は満タンになり、そうかと思うと

またたく間に、カラカラになった。



男は妻に言われるまで、ガス欠で船が

沈没しそうだと、気づかない時も

あった。



妻は思った。大きな不安と共に。


わたしが、しっかりしなければ‼︎



だけどいつも、舵を切るのは、男だった。

島の男は、妻の言うことには、愛想よく

返事をしといて、実行することはなかった。



なぜなら、俺の船だったから。

無責任な男

島の男は、自由だった。

でも、知らなかった。


自分の自由の為に、妻が1人で

全てを背負っていることを。


自由な男はたった今、妻や家族に

何も言わず、ベトナムへと旅行へ

旅立った。


妻へ知らせたのは、飛行機に乗る直前

だった。


空港の写真と共に


行ってきます。


とラインした。