ある島の男とわたし

小さな会社の社長である夫とわたしのこと

男が自分の分を取り忘れる理由

島の男は、もうかりそうな、おおきな仕事に

巡り会えても、仲間たちに分け与える気分の

良さに酔いしれて、自分の分を取り忘れた。



否、取り忘れたのではない。



計画がなかった。ザックリ勘定。見栄っ張り。

経営能力の、無さ?勉強不足?




島の男の妻は、いい知れぬ不安に襲われた。



島の男は、なぜ、最後に、自分の分が

残ってないのか、考えようとしなかった。

逃げたかった。目をつむりたかった。

調べてほしくなかった。

ザックリ考えた。考える暇もなかった。

いつも、いつも、いっぱいいっぱいだった。



妻は、男を、じっと見ていた。

自分の分を取り忘れる男

島の男は、がんばる男だった。

朗らかで、明るく、いい人間だった。

たくさんの仕事をこなした。

おおきな仕事を得る素質もあった。

おおきな仕事が来たときは、みんなにも

分けてやった。男は誇らしかった。

その前に見栄っ張りだった。


共存共栄。


それが男の好きな言葉。


だかいつも、自分の分を取り忘れた。

どんなにおおきな仕事が来ても、

最後にはいつも、何にも残らなかった。

男のやすらぎ

島の男の1番のなぐさめは、

事務員だった。事務員を見ると

心が安らいだ。



わざわざ、こんな小さな、その業界の

人しか知らない会社。古い倉庫の中に

事務所を作った。誰も、ここに会社が

あるなんて、知らない。そんな俺の

会社に、ハローワークを通して来てくれた、

愛しい事務員!



妻と違い、1つ返事で聞いてくれる。

口答えしない。叱らない。怒らない。

文句言わない。綺麗にしてる。

自分の思うように、動いてくれる。

いつも、事務所にいてくれる。



ある意味、男が今、1番大切に思っている

のは、事務員だった。